研究室で扱うテーマ

2020年3月農村観光の調査(京都府綾部の古民家民泊調査 ふるまやにて)
陶芸体験プログラムの調査

黛研究室の紹介

黛研究室では、持続可能システム及び自然共生システムに着目した、農村観光、民族観光、文化観光などをテーマに研究を行っています。

2021年では1名の院生が修士課程を首席で卒業しました。中国人留学生のレイメイキンさんは、日本の農村観光における体験プログラムを調査し、中国における農家楽に取り入れる提案を行いました。

本研究室では地域科学 (Regional Science) の研究視座より、社会調査を実施し得られたデータについて、定性的および定量的(統計解析を用いる)に結果を示し考察することを必須としています。このため、調査地に出向いてのインタビュー調査、アンケート調査等の実施を必須としています。地に足のついた研究課題とその解決策を探るため、自分で現地に出向き、自分で調査データを得る作業に重きを置きます。また、ヘリテージ保護に関連するメディア・デザイン研究も対応します。教員のフットワークも軽いので、今後もサステナブルなツーリズムの発展に貢献できる研究に取り組んでいきます。

 

黛ゼミナールの国際観光学科における学習テーマは、インタープリテーションです。


日本国内で使われているインタープリテーションという言葉は、分類すると、公園関連(国立公園、都市公園、自然公園)、観光関連、博物館関連(サイエンス・インタープリター等)、環境教育関連(公園関連や観光関連にも通じている)、演劇関連(例えば語り手が生きた語りを行うオーラル・インタープリテーション等)、IT関連(例えばプログラムの翻訳)等になります。本ゼミナールでは、観光関連およびそれに通ずる環境教育関連において用いられるインタープリテーションに焦点をあてています。

インタープリテーションは、直接的に人を介したパーソナル・インタープリテーションと、活字メディアや映像メディア、展示、解説版等の施設や人の解説の補助的に用いる情報提供時に扱うノンパーソナル・インタープリテーションの2種類に分けることが出来ますが、本ゼミナールでは両方の学習を行なっています。
野外の自然環境の中で行なうネイチャーガイドと表現されるパーソナル・インタープリテーションの手法については国内では多く取り組まれていますが、メディアを利用するノンパーソナル・インタープリテーションの専門的な知見を持った取り組みは未だに発展途上にあり、本ゼミナールでの学びの意義を深める1つの特徴にもなっています。
教員がネイチャーガイドとして長野県軽井沢町で仕事に従事した経験、プライベートでの森林インストラクターや環境カウンセラーの資格を通じた活動、環境コミュニケーションを主題としたメディア制作の業務経験と研究経験、これらのさまざまな経験による知見を活かしながら、ゼミ活動が進められています。

インタープリテーション実習 鎌倉

本ゼミナールでの焦点


本ゼミナールで焦点を当てているインタープリテーションでは、潜在的観光資源の発掘および自然環境の保全活動を活性化させ、付加価値を与える役割を担います。また、ツーリズムを展開する場合における、マーケティングのための有効な手段として利用する価値があるとも言われています。さらに、地域の人々の活躍の機会も作り出し、老若男女をはじめとした多様な世代の人々が活動することができることで、地域住民のエンパワーメントを高めることが期待できます。このような点から、インタープリテーションは着地型観光やエコツーリズムおよびグリーンツーリズムなどのニューツールズムの分野の発展に大きく寄与する可能性を秘めています。しかしながら、日本のインタープリテーションは活動が注目されて既に30年近い年月が経っていますが、一般的な理解は未だに発展途上にあり、インタープリテーションへの理解と共に、インタープリターの社会的な役割の普及と同時に資質の向上が引き続き課題となっている状況です。

インタープリテーションの実践者、つまりは米国発祥のHeritage Interpreter(ヘリテージ(自然環境・文化遺産) インタープリター)の役割をする者をインタープリターと呼びます。Heritage Interpreterの役割は、自然環境・文化遺産の対象について、「単なるメッセージではなく、その背景にあるものを伝える」というフリーマン・チルデンの言葉を原則として、「様々な技法を駆使した伝達によって、相手の興味関心を惹き、(対象物に対する)相手の経験が深まることによって、その結果(相手の)生活が豊かになること」ができる役割を持つ者といえます。また、Heritage(自然環境・文化遺産)だけでなく、地域おこしで地域を観光地化するために必ずしも遺産を紹介するばかりではないけれども、地域の魅力を広く紹介する立場の者も、インタープリターの種類であると解釈することとしています。

 

学習だけに留まらず実践を重ねる


本ゼミナールでは、インタープリテーションの理論と技術を学び、その技術を社会人になった後に活かせることを目指しています。基本的には学習だけに留まらず実践を重ねる事で、学生一人一人が卒業時にはインタープリターとしてボランティアの立場等で活躍できるようになる事を目的としています。

とはいうものの、黛ゼミナールからインタープリターとして就職をする学生は現在までにいない状況です。これは、インタープリターの採用が就職先としての間口が非常に狭いこと、お給料が低いこと、終身雇用が約束されないことが理由としてあげられます。そのため、ゼミナールでは一般的な社会人として活躍するためのインタープリテーションのスキルを身につけることを重視しています。一般的な社会人スキルとしては、プレゼンテーション能力の向上、自分の考えを相手にわかりやすく理解してもらえるようになる技術の向上、人前で緊張しない心構えの習得などです。

教員がネイチャーガイドの役割を持つインタープリターとして働いていた経験によって、インタープリターは自分の得意とする地に足の着いた現場(フィールド)を持って学びを深める事がもっとも大切であることを、ゼミの学びの精神としています。このため、地に足の着いた現場の体験のために、活動フィールドは国内ばかりでなく、教員が国際協力活動を行なっているインドネシアバリ島を主としています。現地の自然環境、文化、慣習、村人の生活と貧困などの多くの課題を直接見て知る事で、これらの課題の解決にどのようなインタープリテーションが必要とされるかを学生それぞれが考えて取り組んでいます。取り組む課題は卒業論文のテーマとして研究に進めています。

 

 

インドネシアバリ島のアグロフォレストリー活動


教員が国際協力活動を行なっているインドネシアバリ島のプロジェクトは、アグロフォレストリー活動です。

アグロフォレストリーとは、農林業問題と貧困問題を抱える地における、環境と経済の同時課題解決を目的としています。
アグロフォレストリー(森林農業)プロジェクトでは、基本的な農作物の栽培、および農作物を利用した小産業化(一村一品運動の考え方)を目指して日々活動を続けています。農作物を利用した一村一品に関しては、ユネスコ無形文化遺産に指定された細川紙の伝統工芸師の直接指導による技術を取り入れた紙すきプロジェクトを村人と一緒に育てている最中です。この紙すき製品を日本で取り入れる手法として、フェアトレードプロジェクトを行なっています。さらに、この現地での生産現場に参加し、アグロフォレストリー活動を学び、体験することができる、グリーンツーリズムの構築も同時に目指しています。これらの活動は、活動内容、農作物、製品など、すべてがわかりやすい説明が必要とされます。インタープリテーションの技術を応用する事で、このプロジェクトを活性化するだけでなく、村の自然環境の保全と、村人の貧困からの脱出へ向けた、直接的な効果を得ることにつなげ、学生はグリーンツアーを企画実践することで、実学の機会を得る事が出来ます。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: th_P1020706-1.jpg

アグロフォレストリー現地での農村観光ガイドの実習

 

就職に強い黛ゼミナール


研究室のプロジェクトに一生懸命取り組んだ学生は、就職活動において内定をたくさん取ってきています。黛ゼミナールの学生は総じて就職状況が大変良い状況です。

その理由として、インドネシアバリ島のプロジェクトは、教員を中心として、誰かに参加させてもらっているのではなく、自分たちで直接現場と協力し合ってプロジェクトを育てているため、学生さんにも大きなやりがいと責任感が生まれるからです。大学の学びとしての国際協力と言うと、NGOや国際機関の持っているプログラムに参加させてもらい、現場を見てくるという学びとなりがちです。ですが、本ゼミナールでは、バリ島のアグロフォレストリープロジェクトは、自分たちで進行していかなかれば誰にもやってはもらえず、そして、今までの助成金活動で培われてきた内容に、高い成果を出さなければならない責任を持っています。このために、自分たちのプロジェクトとしての意識が身に付くことで、就職活動時では面接にこぎ着けると、面接官を取り込むような話題の豊富さ、自信を持った活動経験の話題提供によって、企業に求められる社会的能力を身につけた人材として認められ、内定を得てくる学生が非常に多いです。

バリ島の大学生との交流